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ユニットより先に考えたい電気・空調・給排水|設備容量不足を防ぐ設計確認

開業準備では、ユニットの台数やメーカーに目が向きやすい一方、それを動かす電気、空調、給水、排水、圧縮空気、吸引の設計は図面の奥に隠れます。容量不足や配管勾配の不具合は、完成後に壁や床を開けなければ直せず、休診を伴う改修になりやすい問題です。

設備設計は「何台置くか」だけでは決まりません。どの機器を同時に使うか、どれだけ発熱するか、一日に何回洗浄や滅菌を行うか、将来何台増やすかで必要条件が変わります。テナント側の既存設備と、医院が追加する設備の境界も確認が必要です。

院長が専門計算をする必要はありませんが、設計者、施工会社、機器メーカーへ何を提示し、どの数値を誰が確定したかを管理する責任は残ります。後戻りしにくい順に、確認すべき実務を整理します。

開業準備の全体像:歯科医院の開業準備は何から始める?で、この記事を含む開業準備全体の進め方を確認できます。

間取りを決める前に設備条件を数値化する

機器リストを消費量と設置条件まで書く

設備計画の起点は、見積書の機器名ではなく、仕様書を付けた機器リストです。ユニット、コンプレッサー、バキューム、滅菌器、洗浄器、エックス線装置、CT、口腔外バキューム、技工機器、冷蔵庫、サーバー、給湯、決済端末まで、電力、電圧、給排水、発熱、重量、寸法を記載します。

同じ名称の機器でも、型式やオプションで必要条件は変わります。「CT一台」「滅菌器二台」という数量だけで設計を進めず、最終候補のメーカー資料を設計者へ渡します。機種未定なら、どの範囲の仕様を満たす設計にするか仮定を明記します。

機器の周囲には、本体寸法以外に保守スペース、扉の開閉、排熱、給排水接続、搬入経路が必要です。壁にぴったり収まる図面でも、フィルター交換や修理のたびに機器を外す設計では運用費が増えます。メーカーの設置条件を平面図と展開図へ反映します。

リストには、開院時に導入する機器、開院後一年以内、将来候補を分けて載せます。将来枠に配線、配管、床補強、空調余力だけを準備しておけば、機器本体を買わずに拡張可能性を残せます。

仕様書の改訂日と型式確定日も記載し、設計に使った版を固定します。見積変更で後継機へ替わると、電源や給排水の条件が変わることがあります。発注担当は機器変更を単なる金額変更にせず、建築・電気・機械設備への再照会を必須にします。

最大使用量ではなく同時使用の場面をつくる

すべての機器の最大値を単純に足すと過大設計になり、逆に平均使用量だけを見ると診療ピークで停止します。朝の立ち上げ、診療中、昼の洗浄、終業前の滅菌など、時間帯ごとに同時に動く機器を表にします。

たとえば、複数ユニットで診療しながらCTを撮影し、滅菌器と洗浄器が動き、スタッフルームで電子レンジを使う場面があります。ブレーカーが落ちる組み合わせ、給湯が不足する時間、排水が集中する場面を設計者に計算してもらいます。

コンプレッサーとバキュームは、ユニット数だけでなく、同時稼働率、配管長、口腔外バキューム、使用機器の要求流量から選定します。容量を大きくすればよいとは限らず、騒音、発熱、設置面積、起動電流、保守費も増えます。

想定は院長一人の診療だけで作らず、歯科衛生士枠が同時に動く最大シフトで考えます。開院直後の患者数が少なくても、設備は壁や床の中へ固定されます。目標とする三年後の診療体制を設計条件に加えます。

増設する位置と止められる単位を先に決める

将来ユニットを増やす予定なら、空きスペースだけでなく、電源、給水、排水、エア、バキューム、通信をどこまで先行敷設するか決めます。床を全面解体せず接続できる位置に点検口や予備配管を設け、図面と現場写真を保管します。

増設時に医院全体を止めないため、系統を分けて遮断できることも重要です。一台の修理で全ユニットの給水や吸引が使えなくなるのか、診療室ごとに止水や電源遮断ができるのかを確認します。事故時の被害範囲と休診時間が変わります。

空調も、待合、診療室、機械室、サーバー周辺で必要条件が違います。将来個室化したときに空気が回らなくなる、壁を追加すると温度センサーが偏るといった変化を想定します。間仕切り変更の可能性を設備設計へ伝えます。

予備設備は、いつか使うという曖昧な指定にしません。「ユニット二台を追加」「小型技工機を導入」「スタッフ十人へ増員」など負荷を数値で置き、追加工事費と先行工事費を比較して採否を決めます。

電気・空調・給排水を系統ごとに確認する

電気は容量、回路、停電時の三層で見る

まず、建物からテナントへ供給できる契約容量と幹線容量を確認します。希望容量が建物側で確保できず、キュービクルや幹線の改修が必要になると、費用と工期が大きく変わります。賃貸借契約前または設計初期に、貸主の資料と電気設計者の確認をそろえます。

次に、機器ごとの専用回路、電圧、コンセント形状、接地、漏電保護を仕様書どおりに設計します。診療用機器と電子レンジが同じ回路に入る、延長コードを前提にする、床コンセントへ清掃水がかかるといった配置を避けます。

停電や瞬時電圧低下への対策も用途別に考えます。すべてを無停電電源装置で動かすのではなく、サーバーや通信機器を安全に終了する時間、受付データを保持する必要、診療機器のメーカー要件を整理します。復電時に一斉起動させない手順も決めます。

分電盤には、誰が見ても回路が分かる表示を付け、予備回路と図面を残します。停電時にスタッフが触れてよい範囲、電気工事業者へ連絡する条件を開院前に共有します。国土交通省の標準仕様などは参考になりますが、実施設計は法令と現場条件に詳しい有資格者が行います。

空調は患者の快適さと機器の発熱を分ける

空調容量は床面積だけで選ばず、窓面、方角、天井高、在室人数、照明、機器の発熱、扉の開閉を含めて計算します。診療室はユニットやスタッフの発熱があり、待合は入口から外気が入り、機械室はコンプレッサーなどが熱を出します。

一台の大きな空調で全室をまかなうと、待合は寒いのに個室は暑いという偏りが起こります。ゾーン分け、吹出口と吸込口の位置、温度センサーの場所を、間仕切りと患者位置に合わせます。患者の顔や小児スペースへ風が直撃しないかも図面で見ます。

換気は空調とは別の機能です。外気を入れ、汚れた空気を排出する経路、必要換気量、給排気のバランスを設計者に確認します。トイレ、技工作業、消毒薬を扱う場所、機械室の排気が待合へ戻らないよう、圧力関係と排気先を検討します。

フィルター、ドレン、室外機は保守できる場所に置きます。点検に診療台の真上へ脚立を立てる、ドレン詰まりで医療機器へ漏水する、室外機の騒音が近隣へ向く設計は後で問題になります。清掃周期と交換費を引き渡し資料に含めます。

給排水は圧力、勾配、逆流、漏水で点検する

給水は、建物の水圧と供給量が、ユニット、洗浄、手洗い、トイレ、給湯の同時使用に足りるか確認します。階数や時間帯で圧力が変わる建物もあります。必要に応じて加圧や貯水の方法を設計者と検討します。

排水は、床下高さと勾配が間取りを制約します。ユニットを好きな位置に置いてから配管を考えると、十分な勾配が取れない、梁を越えられない、詰まりを清掃できないことがあります。建物の排水立管位置を現地確認し、図面との差も測ります。

診療系排水、一般排水、技工や洗浄機器の排水には、それぞれメーカー要件や関係基準があります。逆流防止、臭気を止めるトラップ、結露、排水温度、必要な処理を専門者へ確認します。口腔内から回収される物質の処理も、採用機器と自治体のルールに沿って設計します。

漏水は階下や隣室へ大きな損害を与えるため、止水位置、漏水検知、床防水、機器周辺の受け方を確認します。閉院時に止める系統、凍結や長期休診時の対応、異常時の貸主連絡まで決めます。

工事中と引き渡し時に性能を確かめる

誰がどこまで設計・施工するかを線引きする

建築会社、設備会社、歯科ディーラー、機器メーカー、テナント指定業者の境界が曖昧だと、「相手が用意すると思っていた」という抜けが起きます。電源はどこまで、配管の末端接続は誰、機器搬入と試運転は誰、と設備ごとに責任分担表を作ります。

貸主工事、借主工事、指定業者工事の区分も契約前に確認します。建物全体の容量増設や屋外への排気口設置は、医院側だけでは決められません。承認に要する期間と費用負担を工程表へ入れます。

設計変更は口頭で済ませず、変更図、費用、工期、他設備への影響を承認します。ユニット位置を数十センチ動かすだけでも、排水勾配、照明、床補強、カウンターに影響します。変更履歴を一つの台帳で管理します。

設計者と施工者が異なる場合は、施工図と機器仕様が設計意図に合うかを確認する担当を明確にします。院長が図面の整合を一人で背負わず、専門者同士が直接質疑できる場を定例化します。

隠れる前に写真と測定結果を残す

配線や配管は、床、壁、天井を閉じると位置が分からなくなります。施工途中に、基準となる壁や柱からの寸法が分かる写真を撮り、系統名と撮影日を付けます。予備配管や点検口は特に記録します。

写真だけでは性能を証明できないため、必要な検査結果も受け取ります。電気の絶縁や接地、給水の圧力、配管の漏れ、排水試験、風量、温度など、設計者が定める項目を測定し、是正前後を記録します。

機器搬入前には、電圧、接続位置、床レベル、開口寸法、搬入経路を再確認します。図面上で収まっても、扉の幅、エレベーター荷重、曲がり角で搬入できないことがあります。梱包寸法で確認します。

工事の進み具合を見て安心せず、壁を閉じる前、天井を閉じる前、機器据付前という検査の停止点を契約に入れます。確認なしで次工程へ進むと、是正のための解体費を巡って争いになります。

本番負荷で試運転し保守へ引き継ぐ

引き渡し時は、一台ずつ電源が入ることだけでなく、診療日の同時使用を再現します。複数ユニット、吸引、エア、CT、滅菌、空調、給湯を想定どおり動かし、電圧、圧力、温度、騒音、振動、排水の状態を確認します。

朝の起動から夜の停止まで数時間動かすと、機械室の温度上昇、排水の臭い、空調の偏り、ブレーカーの発熱など、短い試運転では見えない問題が出ます。患者役を座らせ、診療室で会話できる騒音かも確かめます。

引き渡し資料には、竣工図、系統図、機器仕様書、保証書、検査記録、緊急連絡先、消耗品、保守周期を含めます。データだけでなく医院側の共有場所へ保管し、院長以外も止水栓や遮断器の位置を把握します。

開院後一か月、季節が変わる時期、一年点検で性能を再確認します。夏の冷房負荷や冬の結露は春の引き渡しでは分かりません。異常をスタッフが記録できる簡単な設備台帳を用意し、故障になる前の変化を拾います。

まとめ

歯科医院の設備容量は、ユニット台数だけでは決まりません。型式ごとの仕様、同時使用、発熱、給排水、将来増設を数値化し、テナントの供給条件と照合してから間取りを固めます。専門計算は有資格者へ任せ、決定根拠と責任範囲を医院側でも管理します。

配線や配管が隠れる前の検査、本番負荷での試運転、竣工図と保守情報の受け取りまでが設計確認です。目に見えない設備ほど、変更しやすい設計初期に確認することで、開院後の休診、追加工事、患者への不便を抑えられます。専門者との早期確認が重要です。

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福原 隆久のプロフィール画像

歯科医師・歯学博士/医療法人隆歩会 理事長

福原 隆久

歯科医師・歯学博士、医療法人隆歩会理事長。29歳で開業し、現在は6医院、歯科医師15名、スタッフ総勢約120名の組織を運営。大阪歯科大学口腔衛生学講座非常勤講師、日本口腔衛生学会認定医、IDIA専門医。臨床・採用・教育・歯科医院経営の実践知を発信している。