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スタッフへの注意・指導の伝え方|関係を壊さず、行動を変えてもらう方法

歯科医院を運営していると、スタッフへ注意や指導をしなければならない場面があります。患者対応、報告不足、遅刻、医療安全、スタッフ同士の関わり方など、問題をそのままにできないこともあります。

しかし、「注意したことで関係が悪くなるのではないか」「退職につながるのではないか」と心配し、伝えることを先送りする院長も少なくありません。反対に、忙しさや怒りが積み重なり、ある日突然強い言葉で叱ってしまうこともあります。

注意や指導の目的は、相手を反省させることでも、院長の不満を理解してもらうことでもありません。患者、本人、周囲のスタッフ、医院を守るために、問題となっている行動を具体的に変えてもらうことです。

そのためには、人格ではなく事実を扱い、医院の基準を示し、次に何をしてほしいのかを明確に伝える必要があります。また、本人の認識や背景を聞き、知識不足、技術不足、役割の曖昧さなど、問題の原因に応じた支援も必要です。

この記事では、歯科医院で注意や指導がうまく伝わらない理由と、関係を壊さずに必要なことを伝える方法、さらに指導後の行動変化へつなげる進め方を解説します。

スタッフへの注意や指導がうまく伝わらない理由

スタッフへ注意したのに行動が変わらないと、「本人に反省する気がない」と考えたくなることがあります。しかし、伝える時期、内容、基準が曖昧で、本人が何を変えればよいか理解できていない場合もあります。

問題をため込み限界になってから伝えている

小さな問題が起きたときに伝えず、「今回は様子を見よう」「忙しいから後にしよう」と先送りすると、院長の中に不満が積み重なります。

そして、同じようなことが再び起きた際に、「前から何度も思っていた」「いつもそうだ」と、過去の出来事までまとめて強く注意することになります。

スタッフ側からすると、それまで何も言われていなかったため、突然大きく叱られたように感じます。院長は何度も我慢してきたつもりでも、本人には改善する機会が与えられていなかったことになります。

注意は、問題が小さいうちに、できるだけ早く伝えることが大切です。ただし、患者の前や忙しい診療中に感情的に話すのではなく、緊急の対応を終えた後に、落ち着いて話せる時間を取ります。

早い段階で短く伝えれば、内容も具体的になり、関係を大きく損なわずに修正できます。伝えない優しさが、後から強い叱責につながらないよう注意が必要です。

行動ではなく人格を否定している

注意の際に、「責任感がない」「やる気がない」「何度言っても分からない人だ」と伝えると、本人の人格を否定する言葉になります。

人格を否定されたスタッフは、問題となった行動を振り返るより、自分を守ることへ意識が向きます。言い訳をしたり、黙り込んだり、院長への不信感を持ったりすることがあります。

注意で扱うべきなのは、確認できた具体的な行動です。たとえば、「報告が遅かった」ではなく、「患者さんから強い不満が出た時点で責任者への報告がなく、診療終了後まで共有されなかった」と伝えます。

さらに、その行動によって何が起きたのかを説明します。「早い段階で対応できず、患者さんの不安が大きくなった」というように、患者や周囲への影響を明らかにします。

人格ではなく行動を扱えば、本人は何を変えるべきか理解できます。その人を否定するのではなく、仕事上の一つの行動を修正するという姿勢が、関係を守りながら指導する土台になります。

人や状況によって注意の基準が変わっている

同じ遅刻や報告不足でも、院長と親しいスタッフには何も言わず、話しにくいスタッフだけを強く注意すれば、公平性への信頼が失われます。

また、院長に余裕がある日は穏やかに伝え、忙しい日は強く叱るという状態では、スタッフは医院の基準ではなく、院長の機嫌を見て行動するようになります。

責任や経験によって求める水準が異なることはあります。しかし、その違いには説明できる理由が必要です。新人と責任者へ同じ判断力を求める必要はありませんが、患者の安全や誠実な報告など、立場に関係なく守る基準もあります。

何を注意し、何を教育で支援し、どの段階で正式な改善を求めるのかを、院長や幹部の間でそろえることが大切です。

指導者によって言うことが変わる場合も、スタッフ本人だけの問題ではありません。院内のルールや教育基準を確認し、誰が伝えても中心となる内容が変わらない状態を作る必要があります。

関係を壊さずに注意・指導を伝える方法

注意や指導では、柔らかく話すことだけを優先して内容を曖昧にしてはいけません。事実、影響、医院の基準、求める行動を整理し、本人の考えも聞いた上で、次の対応を決めます。

話す前に事実・影響・基準を整理する

注意する前に、院長や責任者自身が、何を問題としているのかを整理します。感情が強いまま話し始めると、関係のない過去の不満まで出やすくなります。

まず、いつ、どこで、どのような行動があったのかを確認します。人から聞いた情報だけで注意する場合は、事実関係が正しいかを慎重に確認します。

次に、その行動が患者、業務、周囲のスタッフへどのような影響を与えたのかを整理します。そして、医院のどのルールや期待する基準と異なっていたのかを明確にします。

たとえば、「最近態度が良くない」という曖昧な伝え方ではなく、「昨日、受付から診療室への確認に対して返答がなく、患者さんへの案内が遅れた。確認を受けたときは、すぐ対応できなくても一度返答することが医院の基準である」と整理します。

事実と基準が明確であれば、院長の好き嫌いや感情ではなく、仕事上必要な指導として伝えられます。

時間と場所を選び一対一で伝える

緊急の危険がある場合は、その場で行動を止める必要があります。しかし、詳しい注意や振り返りは、患者や他のスタッフがいる前ではなく、一対一で落ち着いて話せる場所で行います。

人前で叱られると、本人は内容よりも恥ずかしさや恐怖を強く感じます。周囲のスタッフも、「次は自分が叱られるかもしれない」と萎縮し、問題を隠すようになることがあります。

一方で、時間を空けすぎると、本人が出来事を覚えていなかったり、「なぜ今になって言われるのか」と感じたりします。緊急対応を終え、双方が落ち着いて話せるできるだけ早い時期に伝えます。

話し始める際は、「昨日の患者対応について確認したいことがあります」と、扱うテーマを明確にします。いきなり強い言葉で結論を伝えず、まず本人がどのように認識しているかを聞きます。

ただし、本人の話を聞くことと、問題を曖昧にすることは別です。必要な基準は明確に伝えながら、背景に何があったのかを確認します。

事実・影響・求める行動の順に伝える

注意は、「何が起きたか」「どのような影響があったか」「次から何をしてほしいか」の順に伝えると、本人が理解しやすくなります。

たとえば、「昨日、器具の不足に気づいていたが、診療開始まで報告がなかった。そのため診療準備が遅れ、患者さんを待たせることになった。次回は不足に気づいた時点で、診療責任者へ報告してほしい」と伝えます。

その後で、「そのとき、どのように考えていたか」「報告しにくい理由があったか」を聞きます。本人が報告先を知らなかった、責任者が忙しくて声をかけられなかったなど、仕組み側の問題が見つかることもあります。

説明不足が原因なら再教育が必要です。技術不足なら練習や確認が必要です。基準を理解していながら守らなかった場合は、本人の責任として改善を求めます。

話の最後には、本人の言葉で「次回はどうするか」を確認します。院長が一方的に話して終わるより、本人が取る行動を言葉にすることで認識のずれを減らせます。

注意や指導を行動の変化へつなげる方法

注意した直後に本人が謝ったとしても、実際の行動が変わらなければ指導の目的は達成されていません。次に求める行動を具体化し、必要な支援を行い、一定期間後に変化を確認する必要があります。

改善する行動と確認時期を具体的に決める

「今後は気をつけます」「もっと意識します」という言葉だけでは、何を変えるのか分かりません。本人が行う行動を、確認できる形にします。

報告不足が問題なら、「この条件が起きた時点で責任者へ口頭で報告する」、遅刻が問題なら、「始業時刻ではなく、決められた準備開始時刻までに出勤する」と具体化します。

同時に、医院側が行う支援も決めます。判断基準が分かりにくいなら資料を作る、技術不足なら練習時間を設ける、業務量が多すぎるなら役割分担を見直します。

そして、いつ確認するかを決めます。翌日確認する内容もあれば、一週間や一か月程度の変化を見る内容もあります。

記録が必要な指導では、確認した事実、伝えた基準、本人の説明、合意した行動、確認時期を簡潔に残します。後から責任を追及するためではなく、双方の認識をそろえ、継続的に支援するためです。

改善した行動を具体的に認める

注意した後、改善されても何も伝えず、再び問題が起きたときだけ指摘すると、スタッフは「悪いところしか見られていない」と感じます。

行動が変わったときは、「今日は患者さんの不満を早い段階で報告してくれたので、すぐ対応できた」と具体的に伝えます。何が良かったかが分かれば、本人は同じ行動を再現できます。

認めることは、問題を帳消しにすることではありません。改善に向けて行動した事実を確認し、次の成長へつなげることです。

一度の改善だけで終了せず、必要な期間は継続して確認します。ただし、過去の失敗を何度も持ち出し続けるのは避けます。基準を満たせるようになったなら、その変化を認め、次の役割へ進めます。

指導後の関わりが注意だけで終わらず、改善も見てもらえると、スタッフは指導を罰ではなく成長の機会として受け止めやすくなります。

改善しない場合は原因と対応段階を分ける

必要な説明と支援を行っても、同じ問題が繰り返されることがあります。その際、毎回同じ注意を繰り返すだけでは、本人にも周囲にも負担が増えます。

まず、知識が不足しているのか、技術が不足しているのか、役割やルールが曖昧なのか、本人が基準を理解しながら行動を変えていないのかを分けます。

知識や技術の問題なら、教育方法や練習機会を見直します。業務量や環境の問題なら、役割分担や仕組みを改善します。一方、必要な基準と影響を理解し、支援も受けているのに改善しない場合は、より正式な指導が必要です。

その場合は、改善を求める内容、期間、確認方法、改善がなかった場合に起こり得る役割変更などを明確に伝えます。感情的に「次はない」と脅すのではなく、医院の基準と手順に沿って対応します。

患者の安全、ハラスメント、重大なルール違反など、影響が大きい問題では、通常の教育と同じ段階を踏めない場合もあります。院内だけで判断せず、必要に応じて社会保険労務士などの専門家へ相談し、就業規則や法令に沿って慎重に対応します。

私自身、スタッフとの関係を大切にすることと、必要な指導を曖昧にしないことは、両立させなければならないと考えています。一人への遠慮によって問題を放置すると、患者や真面目に働いている周囲のスタッフが負担を受けるからです。

優しさとは、何も言わないことではありません。本人が改善できる時期に、必要なことを具体的に伝え、支援し、それでも変わらない場合は組織として適切な判断を行うことです。

まとめ

スタッフへの注意や指導の目的は、相手を叱り、反省させることではありません。患者、本人、周囲のスタッフ、医院を守るために、問題となっている行動を具体的に変えてもらうことです。

注意がうまく伝わらない背景には、問題をため込んでから感情的に伝えていること、人格を否定していること、人や院長の機嫌によって基準が変わっていることがあります。

伝える前には、確認できた事実、患者や業務への影響、医院の基準、次に求める行動を整理します。緊急時を除き、人前ではなく一対一で、問題が起きてからできるだけ早く伝えます。

話す際は、事実、影響、求める行動の順に説明し、本人がどのように認識していたかも確認します。知識不足、技術不足、役割の曖昧さなど、原因に応じて教育や仕組みも見直します。

指導後には、改善する行動、医院側の支援、確認時期を決めます。行動が変わったときは具体的に認め、必要な基準を満たせるようになったことを伝えます。

十分な説明と支援を行っても改善しない場合は、同じ注意を繰り返すのではなく、原因と対応段階を整理します。重大な問題では、就業規則や法令に沿い、必要に応じて専門家へ相談することも必要です。

関係を壊さない指導とは、耳当たりの良い言葉だけを選ぶことではありません。人格を傷つけず、仕事上必要な基準を明確にし、本人が次に取るべき行動を理解できるように伝えることです。

まずは現在、伝えにくくて先送りしている問題を一つ選び、「確認できた事実」「生じている影響」「次に求める行動」の三つを書き出してみてください。感情ではなく事実と基準を整理することが、関係を守りながら必要な指導を行う第一歩になります。

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歯科医師・歯学博士

福原 隆久

29歳で開業し、現在は6医院を展開。歯科医師15名、スタッフ総勢120名規模の組織を率いながら、臨床・採用・教育・医院経営・組織づくりに取り組んでいる。AYM-Dを通して若手歯科医師の技術向上を支援、AYM-Sを通して他院の経営向上もサポート。歯科成功大全では、自院経営と他院支援の両面から培った知見をもとに、机上の理論ではなく、院長が現場で使える実践的な考え方を伝えている。