歯科キャリア成功コラム

成功する歯科医院の秘訣!経営とマーケティングの極意

はじめに

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「念願の歯科医院を開業したものの、日々の診療に追われ、気づけば経営はギリギリの状態」「もっと医院を成長させたいが、何から手をつければ良いか分からない」

これは、かつて多くの勤務医の先生方が抱くであろう、院長という立場になって初めて直面する、共通の悩みかもしれません。素晴らしい医療技術と情熱を持って開業しても、それだけでは「成功する歯科医院」を創り上げることはできません。なぜなら、優れた経営と効果的なマーケティングは、決して別々に存在するものではなく、成功という目的地へ向かうための車の両輪だからです。

私自身、6つの分院を展開する過程で、数え切れないほどの壁にぶつかりました。しかし、その度に経営とマーケティングの両面から課題を分析し、改善を繰り返すことで、持続的な成長の軌道に乗せることができました。本記事では、多くの先生方が見落としがちな「経営とマーケティングの統合」という視点から、成功する歯科医院の秘訣を、具体的な数値や実例を交えながら、包み隠さずお話しします。

1. 「成功」の定義を、まずご自身で明確にすることから

「成功する歯科医院」と聞いて、先生は何を思い浮かべるでしょうか?多くの患者さんが訪れ、売上が右肩上がりに伸びていく光景でしょうか。もちろん、それも一つの重要な指標です。しかし、私は、売上や利益といった数字だけを追い求める経営は、いずれ限界を迎えると考えています。

本当の成功とは、もっと多角的で、深いものであるべきです。例えば、以下のような要素を総合的に満たしている状態こそ、私が考える「成功」の形です。

  • 高い患者満足度: 患者さんが心から満足し、感謝の言葉を伝えてくれる。
  • スタッフの幸福度と成長: スタッフが仕事に誇りとやりがいを感じ、イキイキと働いている。
  • 院長の理想とするライフバランス: 院長自身が心身ともに健康で、家族との時間や自己投資の時間も確保できている。
  • 持続可能な成長: 上記の要素を高いレベルで維持しながら、医院が安定的に成長し続けている。

売上を上げるためだけに、無理な診療予約を詰め込んだり、スタッフに過度な負担を強いたりすれば、短期的には利益が出るかもしれません。しかし、それは必ず患者満足度の低下やスタッフの離職を招き、結果として医院の評判を落とし、経営を悪化させるでしょう。だからこそ、最初に「自院にとっての成功とは何か?」という経営理念、つまり医院の羅針盤となる北極星を明確に定めることが、全ての戦略の出発点となるのです。

2. 経営とマーケティングを統合する
「3つの視点」

自院の「成功」を定義できたら、次はその実現に向けて、経営とマーケティングを統合的に動かしていくフェーズです。私は、この2つを繋ぐために、常に「3つの視点」を意識しています。

① 数値管理の徹底(KPI設定と分析) これは経営の根幹であり、マーケティングの効果測定の基盤でもあります。新患数、自費率、リコール率、キャンセル率、患者一人当たりの単価(ARPU)など、自院の成功指標(KPI)を最低でも月次で追いかけます。重要なのは、ただ数字を眺めるのではなく、「なぜこの数字が変動したのか?」という仮説を立て、検証することです。例えば、「新患数が減ったのは、競合医院が近くに開業したからか?それともWebサイトからの流入が減ったからか?」と深掘りし、レセコンのデータやGoogleアナリティクスを分析することで、打つべき次の一手が見えてきます。感覚や経験だけに頼るのではなく、客観的なデータに基づいて意思決定を行う文化を根付かせることが極めて重要です。

② 患者体験の最適化(マーケティング視点) マーケティングの役割は、新患を集めることだけではありません。むしろ、来院してくださった患者さんに最高の体験を提供し、ファンになっていただくプロセスこそが、最も重要なマーケティング活動です。これは、経営視点で見れば「顧客満足度の向上」と「リピート率の改善」に直結します。初診カウンセリングの質、待ち時間の快適性、スタッフの接遇、治療説明の分かりやすさなど、患者さんが医院に滞在する全ての時間を「マーケティングの機会」と捉え、改善を続けます。例えば、私の医院では、カウンセリング専門のスタッフ(トリートメントコーディネーター)を配置し、患者さんの不安や要望を徹底的に引き出すことで、自費率と満足度の両方を大幅に向上させることに成功しました。

③ 組織づくりとスタッフ育成(経営視点) どんなに優れた戦略を描いても、それを実行するのは「人」、つまりスタッフです。院長のビジョンに共感し、主体的に動いてくれるチームなくして、医院の成長はあり得ません。これは経営の最重要課題であると同時に、最高のマーケティング投資でもあります。なぜなら、満足して働いているスタッフの笑顔や態度は、どんな広告よりも雄弁に医院の魅力を患者さんに伝えるからです。定期的な面談による目標共有、スキルアップを支援する研修制度の導入、成果を正当に評価する人事評価制度の構築などを通じて、スタッフが「この医院で働き続けたい」と思える環境を整えることが、結果的に患者満足度を高め、医院を成功へと導きます。

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3. 6分院展開で実証した
「成功する医院の共通点」

これまで6つの分院を立ち上げ、多くの歯科医師と関わる中で、「成功する医院」にはいくつかの明確な共通点があることに気づきました。それは、決して特別なことではなく、むしろ原理原則に忠実であることの証左です。

  • 明確なビジョンとミッション: 院長が「どのような医療を通じて、地域社会にどう貢献したいのか」という熱い想いを持ち、それをスタッフ全員と共有しています。
  • データドリブンな意思決定: 院長が勘や経験だけに頼らず、日々の診療データを分析し、客観的な根拠に基づいて次の戦略を立てています。
  • スタッフの主体性を引き出す仕組み: トップダウンではなく、スタッフ一人ひとりが医院の目標を自分事として捉え、改善提案などが活発に行われる文化が醸成されています。
  • 地域との深い繋がり: 院内での活動に留まらず、地域のイベントに参加したり、学校の歯科検診に協力したりと、地域住民から「自分たちの歯医者さん」として愛され、信頼されています。

これらの共通点は、前述した「経営とマーケティングの統合」が、高いレベルで実践されている医院の姿そのものと言えるでしょう。

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まとめ

歯科医院の成功は、特定の魔法の杖を振ることで達成されるものではありません。それは、明確なビジョン(成功の定義)を掲げ、経営とマーケティングという両輪を、日々のデータに基づいて地道に、そして粘り強く回し続けることで初めて見えてくる景色です。

本日お伝えした「3つの視点」や「成功する医院の共通点」を参考に、まずはご自身の医院を客観的に見つめ直すことから始めてみてください。「我流の経営になっていないか?」「スタッフは心から笑顔で働けているか?」「患者さんは本当に満足してくれているか?」その問いこそが、成功への扉を開く鍵となります。

成功は一日にして成らず。しかし、正しい方向に向けた小さな改善の積み重ねは、数年後、間違いなく医院を劇的に進化させます。この記事が、先生方の医院を更なる高みへと導く一助となれば、これに勝る喜びはありません。

 

著者: 福原 隆久(ふくはら たかひさ)

現役歯科医師・医療法人理事長。6つの分院を展開し、現場を知り尽くした実業家ドクターとして、業界全体の底上げのためにノウハウを公開している。

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